William TempsonさんのYoutube動画(【史上最悪】世紀の駄作、ハイシャインクリーナーを使ってみた!)を見ていたら、面白くてインスピレーションが湧いてきたので、リグロインについて、また書いてみました。
リグロインは革に悪くないのではないかという記事を先日書きましたが、革には悪くないけど革を縫っている糸(スティッチ)に悪いということを言っている人がネット上にいました。主張をまとめると以下のような感じです。
1. 靴を縫っているスティッチはポリエステル製の化学繊維でできている
2. ポリエステルは石油でできているので、石油系溶剤のリグロインに溶けてしまう
3. ゆえにリグロインはスティッチにダメージを与えて、ほつれやすくする
見事な三段論法に最近リグロインを使い始めた僕は心配になってきて、リングロインを手に取ってみたところ、リグロインの容器がプラスチックでできていることに気づきました。
プラスチックは石油できているので、石油でできている製品だからといって、リグロインで溶けてしまうことはないようです。ということで「 ポリエステルは石油でできているので、石油の系のリグロインに溶けてしまう 」というのは、小学生並みの論理展開で、聞くに値しないことがわかりました(笑)。
プラスチックとは、熱や圧力を加えることにより成形加工のできる、高分子物質のことです。この高分子物質には、天然樹脂と合成樹脂がありますが、ふつうプラスチックというときには、石油から生まれた合成樹脂のことを指します。
引用:プラスチックの話(https://www.nisseijushi.co.jp/plastics/plastics1.php)
ポリエステルとは
さて、ポリエステルはプラスチックのひとつです。
そして、ポリエステルは主に次の3つに分類され、衣類に使用されるポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)でできています。従って「ポリエチレンテレフタレート(PET) はリグロインに溶けるのか」というのが論点になります。
話が少し難しくなりましたが、プラスチックには様々な種類がありますが、衣服に使われるポリエステル繊維は、ペットボトルの本体と同じポリエチレンテレフタレート(PET)でできていということです。ペットボトルに石油を入れても溶けないのなら、石油を分留して得られるリグロインは革靴のスティッチにダメージを与えることはないのでは?と言えそうということです。
[補足 1]
ひとつ理解しておきたいのは、「プラ」マークにPET (ポリエチレンテレフタレート) が含まれることがあるということです。ポリエチレンテレフタレートでできているボトルでも用途が食品の容器でない場合は「PET」マークをつけることはできません。識別表示は素材の分類ではなく、リサイクルの観点で分類しているのが理由です。
[補足 2]
ポリエチレン (PE) はポリエチレンテレフタレート (PET)の略称ではなく別物です。これを理解しないと議論が上滑りする可能性があります。
ポリエチレンテレフタレート(PET) は石油に溶けるのか?
いいえ、溶けません。「PLASTICS INTERNATIONAL」では4段階中もっとも影響が少ないという評価です。
No Attack, possibly slight absorption. (問題なし、極めて少量吸収する可能性)
引用:CHEMICAL RESISTANCE CHART ( https://www.plasticsintl.com/chemical-resistance-chart )
ということで「リグロインは革靴のスティッチに悪影響を与えない」と言えそうです。根拠のないデマを流すのはヤメてほしいものです。
[参考文献]
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